介護職として仕事をするなら、提供できるサービスと提供できないサービスの境界線を明確にしておかなければなりません。たとえば要介護者の自宅で介護を行う訪問介護は大きく分けて身体介護と生活援助に分類されますが、原則として要介護者の自宅に同居家族がいる場合は生活援助は提供できなくなります。ちなみに生活援助には、要介護者の自宅で掃除や洗濯をしたり食事を調理したりすることが含まれます。ここで注意しておかなければならないのは、たとえ要介護者に同居家族がいなかったとしても、要介護者が全く使用していない部屋を掃除したり来客者のぶんの食事を作ることは生活援助の範囲外になってしまうということです。
また身体介護には入浴や排せつの介助をすることが含まれますが、食事療法についての指導をしたり床ずれの処置をすることは看護師が同伴していないとサービスを提供できないことになっています。ただし一定の条件を満たせば、看護師が同伴していなくても外用薬を塗布したり血圧を測定することが介護職員に認められるケースがあります。ちなみに要介護者が認知症と診断されていたとしても、介護職員が要介護者に代わって銀行からお金を引き出すことはできませんし、各種契約書の代筆をすることもできません。
介護職員は良いサービスを提供すればするほど要介護者からさまざまなことを依頼されるようになりますが、提供できるサービスと提供できないサービスの境界線を基礎知識として理解しておかなければ、介護保険制度を逸脱してしまうリスクがあるのです。